本コラムをご覧いただきありがとうございます。代表の田村です。
過去2回にわたって信用金庫での仕事を事務編と営業編(深耕営業)にわけてお伝えしましたが、今回は営業編の続編として新規開拓のお話をしていきます。エリアが限られているということは前回書きましたが、新規開拓に関してはさらに狭いエリア内での活動となり、これはかなり特殊な環境だったであろうことには自信があります(笑)
もう2度と戻れない、あの若かりし日の記憶を呼び起こしながら書きましたので、スキマ時間の読み物としてどうぞ!
【当時の仕事内容 – 営業編_②新規開拓営業(前編)】
新規開拓営業の具体的な話に入っていく前に、信用金庫の基本的なスタンスを共有したいと思います。私が働いていた組織では、大枠で定められている営業エリアを細分化して、店に近い順に「重点地区」→「準重点地区」→「その他地区」という具合に色分けされていました。(※どこの信用金庫も基本スタンスには大差ないと思います)
前回の記事で書いた「重点エリア」がここでいう「重点地区」ですね。そして、新規開拓営業はこの「重点地区」のみをひたすら攻め続けるものでした。当然ながらいわゆる飛び込み営業です。
それと、この新規開拓営業は各営業マンが好きなタイミングで実施するものではなく、月に数回の決められた日に、全支店の全営業マンがそれぞれの担当エリアで同時に実施する決まりがありました。その決められた日には、台風が直撃していようが雪が降り積もっていようが関係なく、朝から夕方まで全営業マンが一斉に街をうろつくことになります。今でも日中にそれっぽい人を見ると、心の中で「数字は足りているんだろうか」とか余計なお世話も甚だしいことを考えてしまいます。
では新規開拓の日に外出した後、具体的にどのような動きをしているのでしょうか?一応事前準備的なこともあったので、そこから説明していきます。
まずは、歴代の各地区の先輩たちが紡いできたお手製の名簿のようなもの(以下、「リスト」)を確認し、今日攻める場所を検討(あくまで激セマな担当の重点地区内の)します。このリストには、重点地区内の未取引先の住所と、もしわかっていれば名前が手書きで記されていて、これまでに何かしらのコンタクトがあればその内容も載っています。
「〇月〇日面談済み、娘家族と同居」とかから始まり、「ちょうど子供の学費が必要なタイミング、教育ローントライ」みたいな情報を書き込んでいくわけです。まずは取引の開始を目指しているので、口座開設ができればとりあえず良し、いきなり融資の申し込みなんて流れになれば鼻の穴が膨らんでしまう感じです。こうしてリストにはどんどん情報が追加され、それを代々受け継ぎながら熟成させていきます。
事前準備が整ったところで、いよいよ外に飛び出していきます。みんなこれから飛び込み営業をする割には元気がありません。流れはざっくり以下の通りです。
Step①:対象先の家なり事務所なり店舗なりにピンポン/呼び出し実施。
Step②:「〇〇信用金庫▲▲支店の田村です。この地域を担当しておりますので、ご挨拶にお伺いしましたー!」みたいなことを言う(一応マニュアルあり)。
Step③:もし話を聞いてくれそうなら、自己紹介用の自作の本のようなもの(手書きで自分の簡単な自分の情報が書いてある紙とかチラシとかが入っている)を有無を言わさず相手に見せながらしゃべり始める。
Step④:預金か融資の取引に持っていくべく、相手のことを根掘り葉掘り聞いていく。
Step⑤:初回で取引までいけることはあまりないので、次のアポを取って退散。
ここまで読んでいただいた方の中には、「なんだそんな感じか、想像していたよりヌルいなぁ」と某大手証券会社のリテールばりの厳しさでないと面白くないと思った方もいるかもしれませんが、これはこれで地味にキツいんです。
理由は2つあって、1つは冒頭でご説明した通りエリアが狭すぎることです。未取引先のみを周るわけですが、当然既に取引のある先もそれなりに多いので、自分が新規開拓に成功すればするほど攻める先が少なくなっていきます。また、時間的な理由だったり気持ちの問題だったり様々ですが、誰が行っても取引は望めないような方もいるので、実質的に営業を掛けられる先はそんなに多くないわけです。ですので、担当エリアを一周した後は、ただひたすらに如何にサボらず同じ場所を周り続けられるかということのみの状態となり、これがメンタル面で結構キツいんですね。時間が経つにつれてリストがただ単に削られていくということなので、マンネリ感が半端じゃない中でどれだけ戦い続けられるかが勝負です。そして想像に難くないと思いますが、営業マンによって成績が天と地ほど違いました。私の知る限り、信用金庫ほど狭いエリアで飛び込み営業をやっている業種はないと思います。
2つ目の理由は、商品メニューがほとんどないことです。少なくとも当時は投信やら保険やらは扱っていなかったので、シンプルに「預金(普通預金、定期預金、定期積金)してください」か「お金借りませんか?」のどちらか(もしくは両方)を選んでもらうのみということになります。しかも融資に関しては融資担当を通す必要がありますので、情報をもらってくることまでが仕事で、その後の組み立て等には入れない感じでした。ですので、お客さんとしては融資を受けたいと考えているなら良いのですが、融資ニーズがない場合は後はほとんど利息の付かない預金しかないため、前回の記事で触れましたが「取引する(口座開設する)意味ある?」となってしまいます。そういった場面は数えきれないほどありましたので、当時は「もっと色々な商品があったらやりやすいのになぁ」とか思っていました。商品ラインナップが充実していればキツクなかったのかと言われればそんなことはなかったのかもしれませんが、組織の看板や商品力が弱い(失礼!)中での営業活動となるため、つまりそういったものに頼れない=それ以外の何かで相手をその気にさせるしかない、という図式が特に新規開拓の場面ではキツかった記憶です。
思ったより長くなってしまったので、次回に新規開拓営業の後編の話をしていきます。実例を交えながら、リアルな様子が少しでも伝われば良いかなと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!